畳にいつの間にか古いシミができて、見た目やにおいが気になっている方は多いでしょう。
時間が経ったシミは表面から繊維奥へ浸透し、素材やシミの種類で対処法が変わるためそのまま放置すると悪化しやすいです。
この記事では素材の見分け方と応急処置、洗剤の選び方、薄いシミと濃いシミそれぞれの具体的な手順をわかりやすく解説します。
主な流れはシミ判別→素材確認→部分試験→処置→乾燥と仕上げ確認です。
自宅で試せる安全な方法と、業者依頼を検討すべき判断基準も最後にまとめているので続きをご覧ください。
まずはシミの特徴を落ち着いて確認しましょう。
時間がたった畳の染み抜き実践手順

時間がたった畳のシミは、放置期間によって対応が変わります。
ここでは家庭で安全にできる手順を、素材ごとの注意点と一緒に分かりやすく説明します。
シミの判別
まずシミの色と形を観察してください。
茶色っぽい斑点や黒ずみは成分や経年変化が異なります、判別が処置成功の鍵です。
臭いがあればカビや尿などの可能性が高いと判断できます。
触ってべたつきや硬さの差があれば、油やたんぱく質汚れを疑ってください。
畳表の素材確認
畳表にはイ草表、和紙表、化学繊維表、琉球畳用表などがあります。
素材によって水や洗剤への耐性が違うため、処置前に必ず確認してください。
古い畳や表替え直後はデリケートなので、より慎重な対応が必要です。
応急乾拭き
まずは柔らかい布で乾拭きを行い、表面の埃や粉を取り除きます。
強くこすらずに、軽く押さえるようにして汚れを持ち上げるイメージで作業してください。
水拭きや洗剤を使う前の基本作業であり、これだけで改善することもあります。
洗剤選定
シミの種類と畳表の素材に合わせて洗剤を選ぶことが重要です。
洗剤 | 主な用途 |
---|---|
中性洗剤 | 油汚れ一般 |
酸素系漂白剤 | 色素沈着除去 |
酵素系洗剤 | たんぱく質汚れ |
消毒用アルコール | 除菌と脂溶性汚れ落とし |
濃度や使用量は必ずラベルの指示に従ってください。
素材に合わない洗剤を使うと色落ちや傷みの原因になりますので注意が必要です。
部分試験
目立たない端の部分で必ず部分試験を行ってください。
素材が変色したり繊維が固くなるかを短時間で確認します。
変化が見られたら使用を中止して他の方法を検討してください。
薄いシミの処置
薄いシミはまず水で薄めた中性洗剤を使い、布でたたくように処理してください。
- 軽くたたく
- 布をこまめに替える
- 押し出す方向で拭く
布は白いものを使い、色移りを防いでください。
汚れが移らなくなったら水拭きで洗剤を丁寧に落とします。
濃いシミの処置
濃いシミは酵素系や酸素系の洗剤を目立たない場所で試してから使います。
酸素系漂白剤は希釈して使い、短時間で作用させるのがコツです。
染みが深く残る場合は、洗剤を塗布してから柔らかいブラシで繊維の方向に沿って軽くこすります。
こすり過ぎると毛羽立ちや色むらの原因になりますので、作業は慎重に行ってください。
乾燥と仕上げ確認
処置後は風通しの良い場所で自然乾燥させてください。
ドライヤーなどの強い熱は畳を傷める可能性があるため避けます。
完全に乾いたら再度シミの色味や繊維の状態を確認します。
目立つ残りがある場合は専門業者に相談するか、表替えを検討してください。
落ちにくくなる主な理由

畳のシミが時間とともに落ちにくくなる原因は複数あります。
原因を理解すると、適切な対処法や予防策が見えてきます。
液体浸透
畳は繊維と繊維の間に空間があり、液体が毛細管現象で内部まで浸透しやすい構造です。
表面に残った液体は時間がたつと畳表の中層へ移動し、拭き取っても完全に取り除けなくなります。
特に糖分や油分を含む飲み物は繊維に吸着しやすく、固着が進むと色素が深く入り込みます。
したがって、こぼした直後の応急処置がその後の落ちやすさを大きく左右します。
タンニン・鉄分の反応
お茶やコーヒーに含まれるタンニンは畳の成分と化学反応を起こし、褐色のシミを形成しやすいです。
また、水道水や洗浄に使った水に含まれる鉄分がタンニンと反応すると、黒ずみや赤褐色の斑点になることがあります。
こうした化学反応は表面だけでなく内部でも進行するため、見た目より深いダメージがある場合が多いです。
原因 | 特徴 |
---|---|
茶やコーヒー | 褐色化 |
鉄分を含む水 | 黒ずみ |
果汁や赤ワイン | 色素沈着 |
カビ進行
湿気や有機物が残ると、カビが繁殖してシミを悪化させます。
カビは色素を生成し、黒や緑の斑点が定着すると落としにくくなります。
- 白カビの表面発生
- 黒カビの浸透性
- 臭いの発生
早期に換気と乾燥を行い、カビの繁殖を抑えることが重要です。
日光酸化
紫外線による酸化は畳表の色や繊維を変化させ、シミを目立たせる原因になります。
古いシミが日光に当たると周囲との色差が強調され、補修しても目立ちやすくなります。
日焼けや経年劣化を防ぐには、定期的な位置替えや遮光対策が有効です。
必要な道具と洗剤の使い分け

畳のシミ抜きに必要な道具と洗剤を揃えておくと、作業がスムーズになり、失敗を防げます。
ここでは代表的な洗剤と道具の使い分けを、用途や注意点と合わせて分かりやすく説明します。
中性洗剤
中性洗剤は畳表に最も無難に使える基本の洗剤です。
油汚れや食べこぼしなど、比較的軽い汚れの除去に向いています。
使用する際は薄めてスポンジか布で叩くように拭き、残らないように水拭きで仕上げてください。
用途 | 希釈目安 | 仕上げ方法 |
---|---|---|
軽い汚れ | 希釈1パーセント前後 | 布で優しく拭く |
油汚れ | 希釈2〜3パーセント | 水拭きで洗剤残渣を除去 |
酸素系漂白剤
酸素系漂白剤は有機汚れやカビの色素に有効です。
塩素系より色落ちリスクが低く、薄めて使うことで安全に処理できます。
ただし畳表の色柄や素材により色落ちする場合があるので、必ず目立たない場所で試験してください。
使用後は十分に水拭きし、乾燥を早めることが重要です。
酵素系洗剤
酵素系洗剤はタンパク質を分解するので、尿や血液などの生物由来の汚れに向いています。
酵素が働くために温度や放置時間が影響するので、説明書に従って適切に使ってください。
- 尿汚れ
- 血液
- 食べこぼし
- たんぱく質由来の臭い
使用前に希釈や放置時間を確認し、必ず部分試験を行ってから全体処置に移ってください。
消毒用アルコール
消毒用アルコールは速乾性があり、表面の消毒や一部のインク汚れに有効です。
揮発性のため濡れすぎになりにくく、細菌やウイルス対策にも使えます。
しかし高濃度のアルコールは色落ちや表面の艶を損なう恐れがあるため、目立たない箇所で確認してください。
布に含ませて叩くように拭き、擦りすぎないことがコツです。
軟毛ブラシ
軟毛ブラシは畳表の目地に入り込んだ汚れを浮かせるのに便利です。
毛の硬さが強すぎるとい草が傷むため、必ず柔らかめの毛を選んでください。
使用後は水で洗い、しっかり乾燥させることで雑菌繁殖を抑えられます。
- 馬毛ブラシ
- ナイロン軟毛ブラシ
- 古歯ブラシ 小回り用
柔らかい布
柔らかい布は拭き取りと仕上げに欠かせない道具です。
マイクロファイバーや綿布が扱いやすく、糸くずが出にくいものを選んでください。
汚れを移さないために、使い分けと頻繁な交換を心がけると良いです。
拭くときは押さえるように吸い取ることを意識し、擦らないでください。
畳素材別の具体的処置

畳の素材によって染みの取り方は大きく変わります。
ここでは代表的な表素材ごとに、注意点と具体的な処置手順を分かりやすく解説します。
イ草表
天然素材のイ草は吸湿性と通気性が高く、染みが繊維に入りやすい特徴があります。
まずは目立たない場所で部分試験を行い、色落ちや風合いの変化がないか確認してください。
汚れの種類 | 推奨処置 |
---|---|
水性汚れ | 中性洗剤と布拭き |
油性汚れ | 中性洗剤を少量使用後乾拭き |
古い色素汚れ | 酸素系漂白で局所処置 |
濡らし過ぎるとイ草が膨潤し、目立つ段差や変形が出るため、布は固く絞って使用してください。
汚れを押し広げないように、外側から内側へ向かって拭き取ると効果的です。
処理後は風通しの良い場所で立てかけるようにして、しっかりと自然乾燥させてください。
和紙表
和紙表は強度や耐久性が工夫されていますが、水に弱い面があるため取り扱いに注意が必要です。
まず乾いた布で表面のほこりや粉を取り除き、次に目立たない角で洗剤の試験を行ってください。
水分は最小限に抑え、スポンジに薄めた中性洗剤を含ませて叩くようにして汚れを浮かせます。
染みがタンニンや金属イオンに由来する場合は、酸素系漂白剤の希釈液で短時間処置を行い、その後すぐに中和と乾拭きをしてください。
擦り過ぎると和紙の表面が荒れるため、柔らかい布で優しく扱ってください。
化学繊維表
化学繊維表は比較的耐水性と耐久性が高く、家庭用の洗剤で処置しやすい素材です。
色落ちや熱による変形のリスクは素材ごとに異なるため、必ず部分試験を実施してください。
- 洗剤は中性を選ぶ
- 目に沿って優しく拭く
- 漂白は酸素系を薄めて短時間のみ
- 熱や強い摩擦を避ける
油性のしつこい汚れは酵素系洗剤が有効な場合がありますので、説明書に従って使用してください。
処理後は乾いた布で余分な水分を取り、扇風機などで素早く乾燥させるとシミ再発のリスクを下げられます。
琉球畳は厚みがあり縁なしのデザインで、素材感が失われると目立ちやすい特性があります。
色は染色によるものが多く、漂白剤の使用で色ムラが出る危険があるため慎重に扱ってください。
表面の汚れはまず掃除機と柔らかいブラシで浮かせてから対処するのが基本です。
酸素系漂白剤は薄めて局所的に使うことができますが、広範囲の処置は避け、難しい場合は専門業者に依頼することをおすすめします。
最後に、どの素材でも処置後の十分な乾燥を心がけることでカビや変色のリスクを抑えられます。
避けるべき処理

畳のシミに対して誤った処理をすると、シミが落ちにくくなったり畳自体を痛めたりします。
ここでは日常的にやりがちな四つのNG処理と、それぞれのリスクや代替手段をご説明します。
塩素系漂白剤使用
塩素系漂白剤は強力で汚れを落とす力がありますが、畳表には向かない場合が多いです。
タンニンや鉄分と反応して黄変を起こすことがあり、見た目が悪くなる恐れがあります。
リスク | 影響を受けやすい畳 |
---|---|
色落ち | イ草表 |
黄変 | 和紙表 |
繊維脆弱化 | 琉球畳 |
また、強い薬剤は畳の芯材に染み込みやすく、内部で繊維を劣化させることがあります。
使う場合は必ず希釈し、目立たない場所で部分試験をしてからにしてください。
強擦り
力任せにゴシゴシこするのは避けてください。
繊維の毛羽立ちやほつれが発生し、かえってシミが目立つことがあります。
強擦りによってシミが広がり、除去が難しくなる場合もあります。
- 繊維がほつれる
- シミの範囲が拡大する
- 色ムラが発生する
柔らかい布や軟毛ブラシで、トントンとたたくように汚れを浮かせる方法が安全です。
大量水拭き
畳は水に弱く、過剰な水分は内部に浸透してしまいます。
乾きにくい状態が続くと、芯材がふやけて形崩れする可能性があります。
さらに湿った環境はカビの繁殖を促し、臭いや健康被害の原因になることがあります。
汚れはまず乾いた布で吸い取り、その後必要最小限の湿り気で拭き取るのが基本です。
乾かさず放置
濡れたまま放置するとカビや雑菌が急速に増殖します。
初期の小さなシミでも、放置によって変色や臭いが定着しやすくなります。
拭き取り後は風通しを良くして、扇風機や除湿機で早めに乾燥させてください。
天日干しは有効ですが、直射日光が強い場合は色あせに注意し、短時間で済ませることをおすすめします。
最終判断と専門業者への依頼準備

自分でできる処置を尽くしても落ちない、または畳の変色や繊維の損傷が疑われる場合は、専門業者に相談する段階です。
まずはシミの範囲、色、発生からの経過日数を写真で記録しておくと、診断と見積もりがスムーズになります。
畳の素材や試した洗浄方法、使用した洗剤の種類もメモしておいてください。
依頼前に複数業者から見積もりを取り、作業内容と料金、施工後の保証の有無を比較しましょう。
作業当日は周辺の家具を移動または保護し、ペットや小さなお子様の避難も検討してください。
自分での処置に不安がある場合は無理をせず、早めに専門家に任せることをおすすめします。