畳の取り外しで腰を痛めそう、隙間が見つからない、運搬に不安がある──そんな悩みを抱える方は少なくありません。
自己流で進めると畳や床を傷めたり、シロアリやカビの兆候を見落としたりするリスクがあります。
この記事では必要な道具や作業前点検、隙間の探し方から千枚通しの差し方、持ち上げ・運搬のコツまで手順をわかりやすく解説します。
さらにい草表畳・藁床畳・建材畳・縁なし畳それぞれの扱い方や、糸のほつれや床板の腐食といったトラブル対処、安全対策、作業後の床点検まで網羅しています。
結論を急がず順を追って読めば、初めてでも安全に作業できる判断基準がつかめますので、まずは各手順をチェックしてみてください。
畳の外し方

畳を安全に外すには、道具の準備と事前の確認が重要です。
この記事では、初心者でも分かりやすい手順と注意点を、写真なしでも実行できるように丁寧に解説します。
必要な道具
最低限そろえておきたい道具を紹介します。
道具 | 用途 |
---|---|
千枚通し | 隙間作り |
軍手 | 手の保護 |
カッター | 畳表の補修 |
台車 | 運搬 |
巻尺 | 寸法確認 |
作業前点検
まず部屋の中を片付けて、畳の周囲にスペースを確保してください。
畳の表面に異常な膨らみや変色がないか、目で確認します。
床板や敷居に大きなきしみや腐食がないか、軽く踏んで音や感触を確かめましょう。
特殊な金具や押さえが使われている場合は、その位置をメモしておくと後で困りません。
隙間探し
畳と敷居、畳同士の間に指先で入る隙間を探します。
隙間が見つからない場合は、千枚通しで慎重に隙を作る準備をしてください。
畳が密着している場所は、無理に力をかけると縁が裂けることがあるため注意が必要です。
千枚通しの差し方
千枚通しは畳の端、縁から少し離れた場所に斜めに差し込むと入りやすいです。
差し込む深さは表面を傷めない程度に抑え、ゆっくりと幅を広げるように動かしてください。
一ヶ所で無理に広げ過ぎず、数カ所を順に作業することで均等に隙間ができます。
持ち上げのコツ
片手で持ち上げるより、両手を畳の側面に回してしっかり支えます。
腰を使って持ち上げ、腕だけで無理に引き上げないことが腰痛予防になります。
重さを感じたら無理をせず、もう一人に手伝ってもらいましょう。
縁を持つと裂けやすいため、できるだけ畳の内部を支えるように持つと安全です。
運搬と保管
持ち上げた畳は台車や人力で屋外へ運ぶ場合があります。
- 畳を縦に立てかけます
- 直射日光を避けます
- 湿気の少ない場所で保管します
- 重ねる際は段ボールなどで間隔を空けます
保管中は定期的に状態を確認して、カビや虫害がないか点検してください。
床板の初期点検
畳を外した直後に床板の表面を見て、変色や軟化がないか確認します。
小さな濡れ跡や黒ずみがあれば、写真を撮って記録しておきましょう。
腐食や穴が見つかった場合は、自力での補修は難しいことが多く、専門業者に相談することをおすすめします。
畳種類別の外し方

畳の素材によって、外し方や注意点が大きく変わります。
ここでは代表的な4種類について、具体的で実践的な手順とコツを紹介します。
い草表畳
い草表畳は表面が天然素材でできているため、縁や表面を引っ張ると繊維がほつれやすいです。
まずは畳の角や縁を軽く触れて、接着やズレの有無を確認してください。
隙間を見つけたら千枚通しは浅めに差し込み、表面を傷めない角度でてこの原理を使いながら持ち上げます。
表面が乾燥している場合は割れが起きやすいので、重点的に端を支えながら作業するのが安全です。
運搬時は畳を立てるよりも平らに保つほうが変形を防げます。
藁床畳
藁床畳は内部の藁が詰まっているため、重さがあり、床にフィットしていることが多いです。
持ち上げる際は無理に角を引き抜かずに、千枚通しを差し込んで少しずつ浮かせる方法が適しています。
藁が崩れると修理が必要になるため、ゆっくりとした力加減で作業してください。
特徴 | 対処 |
---|---|
重い | 二人で持ち上げる |
中身が崩れやすい | ゆっくり浮かせる |
縫い目がある | 切らないよう注意 |
縫い目や綴じ糸の状況をよく確認してから、千枚通しの差し込み位置を決めると安心です。
建材畳
建材畳は軽量で芯材が合板や発泡体のことが多く、家庭での取り扱いは比較的容易です。
ただし角が割れやすい種類もあるため、角を直接つかむのは避けたほうが望ましいです。
工具や手順を箇条書きで示します
- 手袋
- 千枚通し
- 薄手の板状補助具
- 固定具の有無確認
端の状態を見てから板状の補助具を畳の下に入れ、面で支えて持ち上げると割れを防げます。
もし固定ネジや両面テープが使われている場合は、それを外してから動かしてください。
縁なし畳
縁なし畳は縁がない分、端がむき出しで衝撃に弱く、角から割れるリスクが高いです。
端をつかむのではなく、畳の下側を両手でしっかりと支えて持ち上げるのが基本です。
大型の縁なし畳は片手で持とうとせず、必ず二人で支持点を分けて運搬してください。
保管する際は畳同士が直接こすれないよう、薄い布や板を挟むと表面劣化を防げます。
外し時のトラブル対処

畳を外す際に起きやすいトラブルと、その場でできる応急処置や対処法を分かりやすく解説します。
軽微なほつれから構造に関わる被害まで、状況に応じた判断基準を示しますので、不安な場合は早めに専門業者に相談してください。
糸のほつれ
畳表や縁の糸がほつれるのは頻繁に起きる問題です。
引っ張ったり無理に切り取るとほつれが広がるので、まずは広がりを食い止めてください。
- 切れ端をはさみで整える
- ほつれ部分に薄く布用ボンドを塗る
- 目立つ場合は縁の部分補修を検討
小さなほつれは針と糸でかがるだけで目立たなくなることが多いです。
ただし、縁全体が傷んでいる場合は応急処置では解決しないので、縁替えの検討をおすすめします。
畳の割れ
畳に割れや裂けが生じると、引き上げや運搬時にさらに崩れやすくなります。
まずは割れの範囲と深さを確認し、どの程度の補修が必要かを判断しましょう。
割れの種類 | 対応策 |
---|---|
表面の裂け | 補修テープ貼付 |
芯材の割れ | 補修用パテ充填 |
角の崩れ | 角保護材装着 |
広範囲の割れ | 畳全交換検討 |
小さな裂けは裏返して補強することで延命できます。
芯材自体が割れている場合は無理に持ち上げず、二人以上で支えるか、専門業者に依頼してください。
床板の腐食
畳を外した際に床板が腐食していると、踏み抜きなど重大な事故につながります。
目で見て黒ずみや柔らかさがある場合は、区域には不用意に乗らないでください。
ドライバーなどで軽く突いて軟化を確認し、腐食が広い場合は床板の部分交換を検討しましょう。
軽度の腐食であれば防腐剤を塗布して乾燥させることで対応可能です。
しかし根太や大引きまで傷んでいる疑いがあるときは、構造安全のために大工やリフォーム業者に点検を依頼してください。
シロアリ被害
シロアリ被害が疑われるときは早急な対応が必要です。
土のトンネル状の通路や木くずのような糞が見つかったら、写真を撮って記録してください。
被害箇所を無理に触ると拡散や被害拡大の原因になるため、現状保存を心がけましょう。
まずは専門の駆除業者に連絡し、状況確認と処理の見積もりを取ることをおすすめします。
必要に応じて床下の詳細点検や構造補強が必要になりますので、早めの専門対応が安心です。
作業中の安全対策

畳を外す作業は見た目より力が必要で、注意を怠ると怪我や家屋の損傷につながります。
ここでは個人用保護具から搬出の判断まで、実践的で分かりやすい安全対策を紹介します。
個人用保護具
まずは必要な保護具を揃えることが基本です。
適切な装備があれば、切り傷や腰への負担を大幅に減らせます。
保護具 | 目的 |
---|---|
作業用手袋 | 手の保護 |
スチールトゥ作業靴 | 足元保護 |
膝当て | 膝保護 |
防塵マスク | 粉じん対策 |
保護メガネ | 目の保護 |
手袋は滑り止め付きのものを選ぶと、畳の縁や千枚通しの取り扱いが安全になります。
作業靴は底のグリップが効くタイプを選んで、床板の段差や濡れた床でも滑りにくくしてください。
防塵マスクは古い畳を扱う際のアレルギー対策として有効です。
姿勢と持ち方
正しい姿勢で持ち上げると腰痛を予防できます。
必ず膝を曲げて、背筋を伸ばしたまま持ち上げる習慣をつけてください。
荷物は体に近づけて持ち、腕だけで持ち上げないように注意します。
床から持ち上げる際は一度深呼吸してから声をかけ、ゆっくり動作を行うと安定します。
体をひねる動作は腰に負担をかけるため、方向転換が必要なら足で向きを変えて移動してください。
2人作業の役割分担
重い畳や大きな搬出は必ず2人以上で行うのが望ましいです。
作業前に役割を明確にして、合図や停止方法を決めておくと事故を減らせます。
- リーダー
- 持ち上げ担当
- 誘導担当
- 脚元確認担当
リーダーは合図を出し、持ち上げ担当はタイミングを合わせて動きます。
誘導担当は通路や段差の確認を行い、脚元確認担当は障害物や配線をチェックしてください。
「せーの」などの掛け声で動作を合わせると、安全に運べます。
重い畳の搬出判断
畳が水を含んでいる場合は非常に重くなりますので、自力での搬出は避けたほうが安全です。
次のような条件があるときは専門業者の依頼を検討してください。
畳に明らかな変形や割れがある場合は、持ち上げ時に破損してケガにつながる恐れがあります。
階段や狭い通路を通る必要があるときは、落下や挟まれのリスクが高まります。
重さが見当つかない場合は、まずは一辺だけを軽く持ち上げて様子を確認してください。
不安が残る場合や高齢者のみでの作業は無理をせず、専門業者に相談するのが最も安全です。
畳を外した後の点検と処置

畳を外した後は、床板や床下の状態を速やかに確認することが重要です。
小さな見落としが後の大きなトラブルにつながるため、順序立てて点検と処置を行ってください。
床板の水濡れ確認
まず視覚で床板の色むらや濡れ跡を探してください、変色や黒ずみは水濡れの痕跡です。
手で触ってべたつきや冷たさを感じる箇所があれば、そこは湿気が残っている可能性があります。
臭いが強い場合は長時間の滞留やカビの発生を疑い、早めの対応が必要です。
湿度計や簡易の水分測定器があれば、数カ所で計測して数値を記録しておくと安心です。
換気と乾燥
濡れや湿気が見つかったら、まずは換気で湿度を下げることを優先してください。
窓や戸を開け、風の通り道を作ることで自然乾燥が進みますが、天候に注意が必要です。
効果が不十分な場合は送風機や除湿機を使い、継続的に湿気を取り除いてください。
- 窓全開での換気
- 対角線上の通風確保
- 送風機や扇風機の設置
- 除湿機の連続運転
カビ除去
カビが見つかった場合は、広がる前に対応することが大切です。
軽度のカビは乾いた布で拭き取り、アルコールや薄めた漂白剤での処理が有効です。
強い発生や奥まで染みている場合は、市販の専用剤や専門業者の利用を検討してください。
方法 | 用具 | 注意点 |
---|---|---|
拭き取り | 乾いた布 中性洗剤 | 換気必須 |
漂白剤処理 | 漂白剤希釈液 ゴム手袋 | 色落ち確認 |
重曹洗浄 | 重曹ぬるま湯 ブラシ | 目立たない箇所で試す |
床下断熱の確認
畳を外した機会に、床下の断熱材の有無や劣化をチェックしてください。
断熱材が湿っていたり、痩せて隙間が生じていると冷えや結露の原因になります。
不安があれば専門業者に相談し、必要に応じて断熱補修や施工の見積もりを取ることをおすすめします。
自力で外すかの判断基準

自分で畳を外すべきかどうかは、安全性と作業の難易度、後の処理のしやすさを総合的に判断します。
畳の重さや縁の劣化、床板の状態が不明なときは無理をせず専門家に依頼する方が安心です。
簡単なチェックポイントをもとに、作業可否を確かめてください。
- 畳が非常に重く持ち上げられない
- 畳の角や縁が大きく破損している
- 床板に柔らかさや黒ずみがある
- シロアリや広範囲のカビの疑いがある
- 搬出経路が狭く安全に運べない
- 2人以上での作業が必要な重量である
上記のうち一つでも該当する項目があれば、専門業者に相談することをおすすめします。