畳のサイズや畳割りで迷い、平面図を眺めても実際の使い勝手が想像できず不安になる方は多いですよね。
寸法ミスや開口部との干渉、家具との兼ね合いで後から手直しが発生するなど、設計段階の落とし穴も少なくありません。
本記事は基本寸法と畳割りの基準、縁付き/縁無しや敷き方パターンまで、図面作成に必要なポイントを整理して伝えます。
6畳・8畳・4.5畳とリビング畳コーナーや小上がりまで部屋別実例、寸法測定から作図、施工準備の手順もわかりやすく紹介します。
まずは基本項目から順に読み進め、最後のチェックリストで失敗しない畳平面図作りを確実に進めましょう。
畳の平面図の基本項目

畳の平面図を作成する際に押さえておきたい基本項目を、実務に即してわかりやすく解説します。
ここでの基準を理解しておくと、設計の精度が上がり見積りや施工の齟齬を減らせます。
畳の基本寸法
地域や建物の規格によって基準寸法が異なる点に注意が必要です。
平面図には使用する畳の規格名と寸法を明記してください。
規格 | 寸法 |
---|---|
京間 | 1910×955 |
中京間 | 1820×910 |
江戸間 | 1760×880 |
団地間 | 1700×850 |
半畳 | 880×880 |
上表は代表的な寸法の一覧ですので、現地測定と合わせて最終確認を必ず行ってください。
畳割り基準
畳割りとは、部屋に対して畳をどのように配置するかの基準を指します。
通路や開口部との兼ね合い、座り心地を考慮して目地の位置を決めるのが基本となります。
平面図では畳の向き、目合わせの位置、半畳や四半畳の使用箇所を明示してください。
特に和室の中心軸を揃えるかどうかは、見た目と機能に大きく影響します。
畳の種類
畳は表素材と床材の組み合わせで種類分けされますので、両方を図面で示すと親切です。
表素材には天然い草、和紙表、化学繊維表などがあり、耐久性や色合いが変わります。
床材には藁床、建材床、発泡芯などがあり、厚みや遮音性が異なります。
平面図の注記に「表素材」「床素材」「厚さ」を併記しておくと、発注や見積りでのミスを防げます。
縁付き畳と縁無し畳
縁付き畳は伝統的な見た目で、縁のデザインを検討する楽しみがあります。
縁無し畳はモダンな印象となり、リビングや小上がりに多く採用されています。
平面図では、縁の有無で畳寸法が微妙に変わるためその旨を注記してください。
また、縁無し畳を使う場合は目地の納まりと防水処理を検討すると安心です。
敷き方パターン
敷き方は見た目と機能の両面で重要です。
- 市松敷き
- 寄せ敷き
- 井桁敷き
- 乱敷き
- 置き畳レイアウト
平面図には必ず敷き方名称を記載し、必要に応じて矢印で畳の向きを示してください。
寸法許容差
畳は季節により膨張収縮するため、寸法許容差を考慮する必要があります。
一般的には畳一枚あたり長さ方向で±3mm程度の許容を見ておくとよいです。
壁周りや鴨居との間には2〜5mm程度のクリアランスを設けると調整が楽になります。
図面上に許容範囲や調整用の隙間を注記しておくと、現場での再確認がスムーズです。
開口部との関係
開口部の種類ごとに畳の納まりを検討することが重要です。
引き戸や襖は敷居や溝とのクリアランスを平面図で確認してください。
掃き出し窓や縁側の前に畳を配置する場合は、見切りや段差処理の指示を入れておく必要があります。
通風や採光を損なわない配置にすることで、居心地の良い和空間を実現できます。
部屋別の畳平面図実例

代表的な部屋ごとに畳平面図の実例を紹介します。
各例では寸法感、畳割りの考え方、開口や収納との関係を実務目線で解説します。
6畳和室
日本住宅で最も多い6畳和室の平面図は、基本パターンを押さえておくと応用が利きます。
標準的な畳配置は1畳幅と2畳幅の組み合わせを意識することが重要です。
配置パターン | 主な特徴 |
---|---|
切り形 | 床の間押入戸口位置 |
本間割 | 長手方向を揃える |
半畳割り | 柔軟な家具配置 |
平面図では入口や障子窓の位置と畳目の向きを合わせると使用感がよくなります。
押入れや床の間の取り合いは、畳の半畳単位で寸法を調整しながら図面化してください。
8畳和室
8畳はゆとりがあり、広縁や床の間を含めた平面図でバランスを見ることが大切です。
長手方向に畳目を通すか短手方向で区切るかで印象が大きく変わります。
布団を並べる用途や来客時の座席配列を想定して、開口部との関係を明示してください。
広縁がある場合は段差と巾木の位置も図示しておくと現場での誤差が減ります。
4.5畳間
4.5畳は半畳の扱いがポイントで、畳割りが部屋の用途を左右します。
図面では半畳の配置を明確にし、家具の逃げ寸法を確保してください。
狭さを感じさせないために、畳目の向きや入口位置を工夫するのが有効です。
収納や袖壁の位置に合わせて半畳を調整すると使い勝手が良くなります。
リビング畳コーナー
リビングに設ける畳コーナーは、生活動線との兼ね合いが最優先になります。
ソファやテレビの配置も含めた平面図で、用途の切り替えができるように設計してください。
- 床座スペース
- 子ども遊び場
- 小上がり収納併用
- 段差なしのフラット設計
色や畳縁でゾーニングする案も平面図に落とすと、内装設計が進めやすくなります。
小上がり畳スペース
小上がりは段差を利用した収納や座り心地の演出が可能です。
平面図では段差の高さと出入りの階段位置を必ず明記してください。
下部収納の開閉に支障が出ないように、扉の開き方向や引き戸のクリアランスを書き込みます。
仕上げ材の取り合いも平面図で示すと、現場での取合せがスムーズになります。
寝室畳スペース
寝室に畳を敷く場合は布団の出し入れと空気循環を優先して計画します。
平面図にはベッドや布団の配置、通路幅、および窓位置を明記してください。
床暖房を併用する場合はその範囲と施工上の納まりを図示することが必要です。
夜間の動線を考えた通路確保で、安全性と快適性を両立させてください。
畳平面図作成の手順

畳平面図は寸法精度と使い勝手を両立させることが重要です。
ここでは現場で迷わないための実務的な手順をわかりやすく解説します。
寸法測定
まずは現地で正確な寸法を測定します。
壁芯や仕上げ面のどちらを基準にするかを事前に決めてください。
窓やドアの位置、開閉範囲も忘れずに確認します。
測定項目 | 測定内容 |
---|---|
部屋全体寸法 | 壁間長 |
開口位置 | 窓と戸の位置 |
床の段差 | 段差高さ |
設備干渉 | 柱と配管位置 |
測定はレーザー距離計など精度のある道具を併用すると安心です。
畳割り設計
畳割りは基本寸法と敷き方パターンを考慮して行います。
一般的には柱や建具を基準にして半畳や一畳の配置を調整します。
畳と畳の目地が交差して四隅が揃う配置は避けるのが原則です。
出入口や収納の開閉に影響しないよう、畳の継ぎ目位置を工夫してください。
家具配置検討
畳スペースに置く予定の家具を洗い出して実寸で検討します。
特に背の高い家具や可動家具は動線を圧迫しないか確認が必要です。
- 座卓
- 収納家具
- ベッドまたは布団
- テレビボード
- チェスト
家具と畳の相性を見て、必要であれば畳の寸法や敷き方を微調整します。
図面の作図(CAD)
測定データと畳割りの案を元にCADで平面図を作成します。
先にレイヤを分けて壁、建具、畳、家具、注記の順で整理してください。
縮尺や図面タイトルブロックは初めに整えて、誤認を防ぎます。
図面には畳の表裏方向や繊維目の向きも明記すると施工側での判断が早くなります。
必要寸法の注記
図面上に必要な寸法を過不足なく注記します。
全体寸法、各畳の寸法、建具とのクリアランスを明確にしてください。
寸法許容差や隙間処理の指示も忘れずに記載します。
床暖房や下地の仕様がある場合は、その対応寸法も注記しておくと安全です。
施工図への展開
平面図を施工図に展開して、現場での作業手順を明確にします。
具体的には畳の納まり、縁の種類、段差処理の詳細を図示します。
必要な材料リストや数量、施工順序も併記して現場で使いやすくしてください。
最後に関係者と図面を共有し、疑問点があれば現場確認を行って合意を取ることが大切です。
畳平面図で配慮する設計ポイント

畳平面図は見た目だけでなく、暮らしやすさに直結する設計図です。
ここでは実際の設計や現場で特に配慮したい点を、具体的な視点で解説します。
動線
畳スペースは人の動きが集中する場所になるため、動線を最初に検討します。
- 出入口の位置
- 家具の配置経路
- 掃除や搬入の通路幅
- 来客時の導線
動線が悪いと日常的なストレスにつながりますので、図面段階で家具を仮配置しながら確認します。
採光・通風
畳は自然光の質で印象が大きく変わるため、窓の方向や高さを意識します。
南向きや東向きの窓をどう取り込むかで、畳表の色や配置向きも変わります。
また風の流れを意識して、対角線上に開口を設けることで通風効率を高めます。
開口部位置
障子や引戸の位置は畳の目地や継ぎ目と干渉しないよう配慮します。
開口部の敷居やレールが畳端と重ならないよう寸法を詰めて検討します。
掃き出し窓の位置は、畳の汚れやすさも考慮して設計することが重要です。
床段差処理
畳周りの段差は安全性と美観の両方に影響しますので、早期に結論を出します。
方法 | ポイント |
---|---|
下地調整 | 高さを揃える |
段差納まり | 見切り材の使用 |
小上がり仕様 | 収納と一体化 |
床段差を無理にゼロにするより、使い勝手や構造を踏まえて仕上げを決めるほうが現場では合理的です。
段差の隅に手すりや緩衝材を設けるなど、安全対策も忘れないでください。
収納配置
畳スペースに隣接する押入れや収納は、開閉動作が畳と干渉しない位置に配置します。
小上がりに収納を組み込む場合は、畳の厚みと床構造を調整します。
荷物の出し入れを想定して、棚の高さや扉幅を実寸で確認することが大切です。
床暖房対応
床暖房を併用する場合は、畳の仕様が対応しているかを確認します。
芯材や畳表の材質によっては暖房効率や耐久性に差が出ますので、メーカーの推奨仕様に従ってください。
配管位置や温度管理の方法を図面に明記し、施工時の誤差を減らすことをおすすめします。
平面図を用いた見積りと施工準備

畳の平面図は、材料算出から施工スケジュールまで一貫して使える重要な資料です。
ここでは平面図を元にした見積り作成と現場準備のポイントを、実務で役立つ形でまとめます。
材料数量算出
平面図から必要な畳枚数と寸法を正確に拾います。
隅切りや不定形部分は別途算出し、廃材率を想定して余裕を確保します。
- 畳表 枚数
- 畳床 枚数
- 畳縁 メートル
- 下地合板 平米数
- 接着剤および金物 数量
材料数量は単価や歩掛りに直結しますので、平面図の注記と現地確認を突き合わせて確定します。
畳表と床材選定
見積り段階で畳表と床下地の仕様を明確にしておくと、後の仕様変更が減ります。
用途や予算だけでなく、床暖房対応の可否や耐久性も考慮します。
畳表 | 床材 |
---|---|
い草表 和紙表 機械表 |
合板下地 断熱材 床暖房対応材 |
それぞれの長所短所を平面図上のエリア別に割り振ると、最適な組合せが見えやすくなります。
工事項目の明確化
平面図に基づいて、施工で必要となる工程を洗い出します。
代表的には既存畳の撤去、下地の補修やレベル調整、畳の敷込と微調整が挙げられます。
養生、清掃、立ち合い検査などの付帯作業も工事項目に入れ、責任範囲を明確にしておきます。
見積書作成
見積書は材料費、施工費、諸経費を項目別に分けて提示します。
平面図の縮尺や面積、畳割りの前提条件を明記して、見積りの根拠を示します。
追加工事や変更が発生した場合の単価や対応フローもあらかじめ記載しておくとトラブルを防げます。
施工スケジュール作成
平面図を基に作業順序と日程を組み、工期の妥当性を検証します。
下地調整や接着剤の乾燥時間、床暖房の試運転など、工程間のインターバルも考慮します。
施主との立ち合いや養生解除のタイミングを明確にして、現場運営の齟齬を減らします。
現場で使える畳平面図の最終チェック

現場での最終確認は、図面と実寸が一致しているかを確かめるために必須です。
水平や垂直のずれ、柱や開口部の位置を現地で照合してください。
畳割りの位置、畳の向き、縁の取り合わせが図面通りになっているか注意します。
寸法許容差や施工上のクリアランス、床暖房や下地との干渉も合わせて確認してください。
納材数と切欠きの指示を確定し、現場メモに記録しておきます。
最終的にお客様と図面を一緒に確認し、承認を得てから施工を開始してください。
- 実測寸法の最終確認
- 畳割り位置と向き
- 開口部・建具との干渉確認
- 床暖房・下地の有無チェック
- 寸法許容差の確認
- 納材数と切欠き図の確定
- お客様確認と承認サイン